プレイボーイ誌に見る女性の体の変遷(しんりの手 :psych NOTe)という面白い記事を見つけたのですが、少し中途半端に感じたため、私なりに解説を書いてみました。ただし、元々は英文の記事(論文)ですので、それをベースとしました。少し長いですが、女性の体型の変遷も興味深い話題です。
英語の
原文記事はこちら(ネット上でPDFもダウンロードできます):
![Shapely centrefolds? Temporal change in body measures: trend analysis](https://blog-imgs-17-origin.2nt.com/o/r/a/orangecoffee/BMJ_20080106.jpg)
しかし、この記事の背景は以下の記事
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8366421?dopt=Abstractに端を発しています。これが、
Signhさんの報告(Adaptive significance of female physical attractiveness: role of waist-to-hip ratio.)の概要です。
![Adaptive significance of female physical attractiveness: role of waist-to-hip ratio.](https://blog-imgs-17-origin.2nt.com/o/r/a/orangecoffee/NCBI_20080106.jpg)
『
ウエスト対ヒップの割合(WHR)で測定される体脂肪の分布は女性の若さ、生殖力や長寿へのリスクに関連しているという証拠が提示されている。
3つの研究成果により男性がWHRの低い値の女性を魅力的と判断する事が示される。
1つ目の研究では、ミスアメリカやプレイボーイ誌で過去30~60年に渡って起こったWHRの変化が僅かであることが示される。
2つ目の研究では、男子学生の場合に、低いWHRの女性をより魅力的、健康的、多産的と見ることが示される。
3つ目の研究では、25歳~85歳の男性が低いWHRの女性を好み、より魅力的だとする傾向を示すことが示される。
これらのことから、WHRは健康や生殖力と同じように、肉体的な魅力を示す重要な指標であることがいえる。
』
これに対して、British Medical Journal (BMJ)で、プレイボーイ誌上での女性の体型の変遷を述べているわけです。1つめの研究成果に反論したのでしょうか・・・(抄録しか読めません)。
以下がその記事です(詳細は英語原文
http://www.bmj.com/cgi/content/full/325/7378/1447?referer=hakenを参照してください)。
http://www.bmj.com/cgi/content/full/325/7378/1447?referer=haken
BMJ 2002;325:1447-1448 ( 21 December )
Shapely centrefolds? Temporal change in body measures: trend analysis
![Shapely centrefolds? Temporal change in body measures: trend analysis](https://blog-imgs-17-origin.2nt.com/o/r/a/orangecoffee/BMJ2_20080106.jpg)
女性の、ボディ・マス・インデックス(体重÷身長の2乗)、ウエスト対ヒップの割合は生殖力や病気へのリスクや長生きにも関連しています。
最適となったボディ・マス・インデックス(20かそれより僅かに低い値)とウエスト対ヒップの割合(0.7かそれより僅かに低い値)に関連した健康は、男性を性的に最大限に魅了するともされる。
先駆的な研究によれば、これらの魅力の最適条件は最適なデザインを反映しており時間的な変化はしないものとされている。
この仮定はメディアに出たファッションモデル達により、過去数十年に起こったボディ・マス・インデックスの低下には当てはまらない。
一般女性の間に摂食障害の事例が増えるとともに、この低下傾向には注意すべきものである。
対照的に、Singhはプレイボーイ誌の見開きページに出たモデルのウエスト対ヒップの割合の解析結果を元に、魅力的なウエスト対ヒップの割合が時間的に一定である証拠を報告している。
しかしながら、Singhは、この結論を一部のサンプルを元に出しており、
プレイボーイ誌の見開きページを使った計測は実は他の事例研究のためにした事であった。
我々は、プレイボーイ誌の1953年12月号~2001年12月号までの577の連続して刊行した本の見開きページを解析した。
身長、体重、バスト、ウエスト、ヒップの計測値を得た(n=532~543,欠落データもあったため)。
これらの計測値から、
ボディ・マス・インデックス、(体重÷身長の2乗)
ウエスト対ヒップの割合、 (ウエスト÷ヒップ)
ウエスト対バストの割合、 (ウエスト÷バスト)
バスト対ヒップの割合、 (バスト÷ヒップ)
Androgyny インデックス
(両性を示す指標?をレビューアーが提案
(ウエスト÷((ヒップ×バスト)**0.5),
つまりは、ヒップとバストを掛け算して√を取ったもので
ウエストのサイズを割る)
を算出した。
分かったことは、
計測値単独での、例えば、身長の増大傾向(r=0.36)は単に世俗的な加速傾向を反映しただけでモデルの年齢の増加傾向も同じく、この調査とは関係が無く、注意を払うものではない。
しかし、
バストのサイズとヒップのサイズは減少傾向にある一方で、
ウエストのサイズが増加している。
体型としての組み合わせの測定値がこれと同じ傾向を示した:
・ボディ・マス・インデックス値は減少(r=-0.46)
・バスト対ヒップは減少(r=-0.13; P=0.002)
他方、
・ウエスト対ヒップは増加(r=0.47),
・ウエスト対バストは増加(r=0.48),
androgyny インデックスも増加(r=0.50)
となった(rは相関係数)。
![Shapely centrefolds? Temporal change in body measures: trend analysis](https://blog-imgs-17-origin.2nt.com/o/r/a/orangecoffee/BMJ3_20080106.jpg)
コメント:
プレイボーイ誌の見開きページを飾るモデルの体型の計測から注目すべき時間的な変化が分かった。
ボディ・マス・インデックスがかなり下がっており、その一方でウエスト対ヒップの割合が平らに近づきつつある。要するに、モデルの体型的な特徴がより両性共通の値へ近づいている事を示している。
これらの時間的な変化傾向からもはや以下のように言うのは奇妙と言える:
・見開きページのモデルの体型は細身の痩身ではなく
まだ砂時計型であるという主張
・性的に魅力的な女性を最大にするウエスト対ヒップの割合が
安定しているという主張
つまりは、この著者は
・見開きページのモデルの体型は砂時計型から細身の痩身の体型に
時代と共に移り変わってきている事、
・ウエスト対ヒップの割合も安定したものではなく、
時代と共に変化してきている事
を主張しているというわけです。
確かに提示されている図(赤い散布図)を見ると、
ボディ・マス・インデックスは右下がり(時代と共に低下傾向)になっており(19.7あたりから18くらいに低下)、相関係数は -0.46 で
負の相関関係が浮かび上がります。
ボディ・マス・インデックスの計算式は、体重÷身長の2乗、なので
この値が低下してきているということは、身長が高くなる(式の分母が大きくなる)か体重が減ってきている事を意味し、
極端に言えば、年々身長が高く体重が軽い女性(痩せた体型)、に変化してきていることになります。
ウエスト対ヒップの割合は、計算式はウエスト÷ヒップですので、この値が時代と共に上昇傾向を示すということは(青い散布図)
ウエストの値が大きくなる、またはヒップの大きさが小さくなる(式の分母が小さくなる)ことを意味し、
年々、お尻が小さくなってお腹が出る体型に変化してきていることになります。相関係数が低いですがバスト対ヒップの値が
減少しているので、お尻が小さくなっている傾向より、バストが小さくなっていると言った方が、ウエスト対バストの増加とバスト対ヒップの減少の両方を説明できるので良いと思います。
Androgyny インデックスは,骨格的な男女の性差による違いを反映するAndrogyny Score(Tanner;肩幅×3-腰幅)と思いきや式が違うのですが、
(ウエスト÷((ヒップ×バスト)**0.5)という式だと、ヒップの小さくなる傾向とバストの小さくなる傾向がAndrogyny インデックスの増加を裏付けています(緑色の散布図)。
もちろん、この論文への反論や批判もあり、そのまま鵜呑みにできませんが、面白いと思います。
日本でも同じような調査はしていないのでしょうか?
日本のモデルで平凡パンチや週間プレイボーイ誌のデータで
追実験などやっていたら知りたいものです。